事業承継税制の適用を受けるには?会社の要件を解説します

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

税負担なく株式を贈与、相続することができる事業承継税制については、自分の会社でも適用を受けることができるか気になる人も多いと思います。

事業承継税制の適用を受けるための要件には、「会社の要件」「先代経営者の要件」「後継者の要件」などの要件があります。

ここでは「会社の要件」について見ていきたいと思います。

(1)中小企業者に該当する

中小企業者とは次の表の条件を満たす会社を言います。


出典:中小企業庁「事業承継の際の相続税・贈与税の納税猶予制度及び免除制度」

なお、納税猶予の対象となる会社だけでなく、特定特別関係会社(※)も中小企業者に該当する必要があります。

(※)特定特別関係会社とは「納税猶予の対象会社」「代表者」「代表者と生計を一にする親族」などが過半数の株式を保有する他の会社をいいます。

(2)常時使用する従業員が1人以上

「常時使用する従業員」とは会社の従業員であって、「厚生年金または健康保険の被保険者」「会社と2か月を超える雇用契約を締結している75歳以上の者」などを言います。

上記の要件を満たせば「後継者の親族」であっても「常時使用する従業員」に該当します。

また、「使用人兼務役員」は「常時使用する従業員」に含まれることとされています。

(3)非上場会社である

納税猶予の対象となる会社は非上場会社でなくてはなりません。また、「特定特別関係会社」も非上場会社である必要があります。

(4)性風俗営業会社に該当しない

納税猶予の対象となる会社が性風俗営業会社に該当する場合は納税猶予の適用を受けられません。

また、「特定特別関係会社」が性風俗営業会社に該当する場合も適用を受けられません。

(5)直前の事業年度における売上金額がゼロを超える

納税猶予の対象となる会社の直前の事業年度の売上金額がゼロの場合、納税猶予の適用を受けることはできません。

なお、売上には「営業外収益」「特別利益」を含みません。

(6)後継者以外の者が「黄金株」を保有していない

「黄金株」とは株主総会等の決議(取締役の選任、合併など)について、拒否権を有する株式を言います。

黄金株を後継者以外が保有している場合には納税猶予の適用を受けることはできません。

(7)資産管理型会社に該当しない

以前からある事業承継税制の一般措置では、「株を贈与又は相続した時の従業員数の80%を5年間維持する(雇用確保要件)」ことが制度を適用する上での最大の懸案事項でした。

事業承継税制の特例では実質「雇用確保要件」が撤廃されたため、「資産管理型会社に該当しないこと」が制度を適用する上での最重要ポイントとなります。

資産管理型会社とは?

「資産保有型会社」と「資産運用型会社」を言います。

〇資産保有型会社

下記の割合が70%以上の会社を言います。

  
A:資産の帳簿価額の総額
B:特定資産(注1)の帳簿価額の総額
C:過去5年間(注2)の後継者やその親族への「配当」や「過大役員給与(損金不算入の役員給与)」

(注1)「特定資産」とは次のものを言います

(イ)国債、株式などの有価証券
資産管理型会社に該当しない子会社の株式は特定資産に該当しないこととされます。

(ロ)自ら使用していない不動産
(例)遊休不動産、第三者に賃貸している不動産、販売用不動産
「従業員社宅」は「自己使用の不動産」とされますが、「役員社宅」は「第三者に賃貸している不動産」とされます。
不動産賃貸業を営む会社は基本的に資産保有型会社に該当することとなり、原則、事業承継税制を適用できません。

(ハ)ゴルフ会員権、リゾート会員権等施設の利用に関する権利

(ニ)絵画・陶磁器・骨とう品などの動産、金・銀などの貴金属、ダイヤモンドなどの宝石

(ホ)現金、預金、代表者及びその同族関係者への貸付金・未収金

(注2)贈与又は相続開始前のものは除きます

上記の割合が直前の事業年度開始の日以後「1日でも」70%以上となった場合には、資産保有型会社に該当することになります。

例えば、本社を売却して、数日後、その売却代金で新たに本社を購入するような場合には、一時的に自ら使用している不動産(特定資産に該当しません)が預金(特定資産に該当)に置き換わります。

このような場合に上記の割合が一時的に70%以上となったときには資産保有型会社に該当するため、事業承継税制を適用することはできません。

また事業承継税制による納税猶予の適用を受けた後でも上記のような理由で70%以上となった場合には、納税猶予が取り消され、猶予税額(と利子税)を納付しなければならなくなります。

「資産保有型会社に該当しない」という要件は事業承継税制を適用し、継続する上で最大のリスク項目と言えます。

〇資産運用型会社

直前の事業年度の下記の割合が75%以上の会社を言います。

資産管理型会社に該当しても事業承継税制を適用できる場合があります

「資産管理型会社」に該当する場合、すなわち「資産保有型会社」または「資産運用型会社」に該当する場合には、原則として事業承継税制を適用することはできません(すでに納税猶予を適用している場合には納税猶予が取り消されます)。

ただし、次の(イ)~(ハ)の要件全てに該当する場合には、例外的に事業承継税制を適用することができます(すでに納税猶予を適用している場合でも納税猶予が取り消されません)。

(イ)3年以上事業を行っている

※「事業」とは下記のいずれかを言います

「商品の販売」「資産の貸付け」「役務の提供」

なお「資産の貸付」には「不動産の貸付」を含みます。つまり不動産賃貸業でも適用の可能性あることとなります。

ただし、「資産の貸付」からは「同族関係者に対する貸付け」を除くこととされているので注意が必要です。

(ロ)常時使用する従業員の数が5人以上である

「常時使用する従業員」からは「後継者と生計を一にする親族」を除くこととされています。

後継者の親族であっても、生計を一にしていなければ「常時使用する従業員」に該当します。

(ハ)事務所・店舗・工場などを所有するか、賃借している

「資産管理型会社に該当しても納税猶予が適用できる要件」については「事業承継税制を適用して株式を移転するときに資産管理型会社に該当しない会社」であってもその内容を理解しておく必要があります。

なぜなら、納税猶予適用後「1日でも」資産保有型会社に該当することとなった場合、納税猶予は取り消され猶予税額(と利子税)を納付しなければなりませんが、資産保有型会社に該当することとなった場合でも、上記(イ)(ロ)(ハ)の要件を満たせば納税猶予は取り消されません。

事業承継税制は数十年の長期にわたり適用の可能性がある制度であり、想定外の事項も起こり得ることから、上記(イ)(ロ)(ハ)の要件を満たして納税猶予の取り消されないようにすることは非常に重要です。

まとめ

事業承継税制の適用を受けるための会社の要件は非常にたくさんあります。

しかしながら、現時点で全ての要件を満たしていると感じた方も多いのではないでしょうか。

ただし、事業承継税制は長期にわたり適用される制度であり、適用後もいくつかの要件は継続して満たす必要があります。

そのため、将来会社や親族の状況がどのようになっているのかということを想定しながら制度の適用を検討する必要があります。

当事務所では事業承継税制についてこれらの点も踏まえつつ検討しますので、興味がある方はお気軽にご相談ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

事業承継税制について相談されたい方へ

事業承継税制についてのお問い合わせは以下まで

若林晃一税理士事務所/株式会社事業承継サポート
〒323-0828 栃木県小山市神山2-5-30


いますぐ問い合わせをする

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA